気候変動の「適応」に向けた取組み

東南アジアでの天候インデックス保険の提供

『天候インデックス保険』とは、気温、風量、降水量などの天候指標が、事前に定めた一定条件を満たした場合に定額の保険金をお支払いする保険商品です。当グループは、SOMPOリスケアマネジメントによるリスク評価技術を活用することで、気候変動の影響を受けやすい農業が主な産業である東南アジアにおいて、農業経営リスクの軽減を目的とした『天候インデックス保険』を提供しています。
2010年、タイ東北部の稲作農家の干ばつ被害の軽減を目的とした『天候インデックス保険』の販売を開始しました。タイ農業協同組合銀行(BAAC)と協働し、BAAC がローン契約者である農家に対して保険加入の募集を行うことで安心して加入できるスキームを構築し、年々販売対象範囲を拡大しています。ミャンマーにおいても、中央乾燥地帯の米農家とゴマ農家を対象に、干ばつリスクに対応した『天候インデックス保険』を一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)と共同で開発しました。
この保険では、地球観測衛星から推定された雨量データを活用しています。また、フィリピンでは、農業生産者を対象に、台風の中心が対象エリアを通過した際に一定の保険金が支払われる『台風ガード保険』を提供しています。さらにインドネシアでは、独立行政法人国際協力機構(JICA)の支援を受けながら『天候インデックス保険』の開発を開始しています。
これらの成果が認められ、本取組みは、国連開発計画(UNDP)が主導する、商業活動と持続可能な開発を両立するビジネスモデルの構築を促進する「ビジネス行動要請(BCtA)」に応える取組みに認定されました。また、2016年には環境省「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則」の定時総会において、環境大臣賞を受賞しました。さらに、ミャンマーでの取組みは、第2回宇宙開発利用大賞で内閣府特命担当大臣(宇宙政策)賞を受賞しました。
当グループは、2025年までにタイを含む東南アジアにおいて3万軒の農家に『天候インデックス保険』を提供することを目標として取り組んでいきます。

「太平洋自然災害リスク保険パイロット・プログラム」立上げへの貢献とプログラムへの参加

損保ジャパン日本興亜は、2013年1月に、世界銀行と日本政府が協力して設立した「太平洋自然災害リスク保険パイロット・プログラム」に参加しました。
地球温暖化や気候変動により、サイクロンや津波などの大規模自然災害が増加傾向にあるなか、こうした自然災害により甚大な被害を受ける可能性のある太平洋島嶼国に対する支援策が世界銀行を中心に議論されてきました。
当社は、気候変動への適応策として、国内外のデリバティブ契約を引き受け、先進的な金融技術・ノウハウの蓄積を図るとともに、2009年5月の太平洋・島サミット(北海道占冠村トマム)における本プログラムの提唱時から検討プロジェクトに参画し、制度実現に向けて民間保険会社として本プログラム立上げを先導し、2013年1月の本プログラムスタート時から参加しています。

●プログラムの概要

太平洋島嶼国のうち、サモア、トンガ、バヌアツ、マーシャル諸島、クック諸島の5カ国が世界銀行とデリバティブ契約を締結し、世界銀行は世界銀行信託基金を設立して、一定規模以上の自然災害が発生した場合に、加入国に対して補償金を支払います。
一方、世界銀行は保険会社とデリバティブ契約を締結し、太平洋島嶼国から引き受けたリスクを民間保険会社に移転させる仕組みとなっています。

再生可能エネルギーの普及・拡大を後押しする保険商品の提供

2012年7月に「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が開始され、再生エネルギー事業へ参入する企業などが増加しています。SOMPOホールディングスグループは、再生可能エネルギー発電参入事業者などに対し、万が一の場合の保険や事業施設の立地環境などのリスク分析サービスを提供しています。

●太陽光発電事業者向け「売電収入補償特約」

損保ジャパン日本興亜では、事業の特性をふまえ、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公表している所在地別、月別の日射量を活用して予想売電収入を算出し、売電収入の減少に伴う実態に即した営業利益の減少を補償する「売電収入補償特約」を開発しました。太陽光発電システムが火災や自然災害などにより損害を被り、事業計画上の発電量に達しない場合の営業利益の減少を補償することにより、太陽光発電事業者のリスクを軽減し、再生可能エネルギー事業の普及に取り組んでいます。

●風力発電事業者向け火災保険『事故防止再発費用特約』

損保ジャパン日本興亜は、風力発電事業者を対象とする『事故再発防止費用特約』を付帯した火災保険を提供しています。風力発電設備はひとたび事故が発生すると損害が高額となるほか、同種の事故が連続して発生する傾向があり、事故の原因調査や再発防止対策が風力発電事業経営における重要な課題となっています。こうした課題解決に対するニーズにお応えするため、SOMPOリスケアマネジメントの事故再発防止ノウハウを組み入れた本特約を開発し、保険とリスクマネジメントサービスを提供することにより、風力発電事業の安定経営を支援しています。

●洋上風力発電事業者向け損害保険

洋上風力発電プロジェクトにおいて、従来は、建設作業中や、完成後の事業運営のそれぞれのプロセスごとに保険手配が行われてきましたが、保険の加入漏れの防止や事業管理の効率性向上の観点から、一括して保険に加入することを望む声が多かったため、損保ジャパン日本興亜では、洋上風力発電設備の建設作業中 および洋上風力発電の事業運営中の不測かつ突発的な事故により洋上風力発電設備に損害が発生した場合の保険を提供しています。
また、SOMPOキャノピアスでは、社内に専門部署を設け、欧州において「洋上風力発電事業者向け損害保険」を提供しています。「洋上風力発電事業者向け損害保険」の分野で世界最先端の引受技術を有する欧州マーケットのノウハウをグループ内で共有し、日本において、よりリスクにあった保険引受けを行っていきます。

●再生可能エネルギー・リスク診断サービス

SOMPOリスケアマネジメントでは、地震、水害、落雷などの自然災害に関するリスク分析やリスクマップ作成などのサービスを通じて蓄積した知見を生かし、「再生可能エネルギー・リスク診断サービス」の提供を2012年9月から開始しています。このサービスは、環境負荷の少ない再生可能エネルギー発電の安定化に向けて、太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギー発電施設などの立地のリスクを分析・診断するものです。

●メガソーラー向けの防火・防犯リスクコンサルティング

SOMPOリスケアマンジメントでは、2013年3月から綜合警備保障株式会社と提携してメガソーラー(大規模太陽光発電所)施設向けの防火・防犯状況に関するリスクコンサルティングサービスの提供を行っています。

●計画段階における風力発電事業リスク診断サービス

SOMPOリスケアマネジメントでは、計画中の陸上および洋上風力発電事業における運転中の各種リスクを洗い出し、グレーディング(段階別のリスク評価)をおこないます。リスク評価に基づいて、事業者にリスク対策を促し、事業開始前にリスク量を低減することにより、プロジェクトの潜在リスク量を軽減することを目的としたサービスです。

●運転中の風力発電設備のリスク点検診断サービス

SOMPOリスケアマネジメントでは、運転中の発電所サイト内において、重大事故・故障につながる蓋然性が高い風車を選定し、第三者の立場から点検診断(インスペクション)と事業リスクの診断を行うものです。重大リスクに対する精密検査の位置づけとなります。

●風力発電施設のリスク評価モデル開発

SOMPOリスケアマネジメントでは、風力発電施設のリスク評価モデルを開発しました。リスク評価モデルを用いて自然災害による事故や電気的・機械的故障などのリスクを見える化することで、風力発電事業におけるリスクの定量的な把握や適正な保険料の算出が可能になります。今後リスク評価モデルを用いたサービスを展開し、風力発電の普及に貢献していきたいと考えています。

●風力発電事業を対象とした財務影響分析サービス

SOMPOリスケアマネジメントでは、風力発電事業における自然災害に伴う事故や通常の故障による損害、故障・事故時の運転停止に伴う損害を確率的に評価し、顕在化したリスクが事業計画におけるキャッシュフローへ与える影響を、定量的に評価するサービスを提供しています。

●風力発電事業者向けセカンドオピニオンサービス

損害保険ジャパン日本興亜とSOMPOリスケアマネジメントは、損保ジャパン日本興亜の火災保険に加入している風力発電事業者に対して、運転・メンテナンス中の各種トラブルの際に解決策を提供する風力発電事業者向けセカンドオピニオンサービスを2016年11月から開始しました。風力発電事業者のO&M(運用・保守)に関するご相談事項について、SOMPOリスケアマネジメントが風力メンテナンスサービス会社や経験豊富なエンジニア・有識者に見解を求め、その意見を総合的にとりまとめ回答するサービスになります。

日本およびアジア諸国における洪水リスク評価手法の開発

SOMPOリスケアマネジメントは、中長期的な気候変動の影響を受けやすい洪水リスクに対して、その適応策となる新たな保険サービス、リスクコンサルティングサービスの提供を目指し、日本およびアジア諸国における洪水リスク評価手法を研究開発しています。
日本では、京都大学、神戸大学と共同で開発した洪水リスク評価システム*1を、保険リスク管理や自然災害リスクコンサルティングに活用しています。
アジア諸国では、タイの洪水リスク評価システムを一般財団法人河川情報センターと共同で開発し、保険リスク管理や保険商品開発に利用しています。また、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール、ブラジルの主要都市域における洪水シナリオリスク評価手法*2を新たに開発しました。これにより、すでに開発済みの中国、ベトナム、タイを加え、アジア7ヶ国と南米1か国で洪水シナリオリスクを評価できる態勢となりました。これらの洪水リスク評価システム、評価手法は、対象エリアを順次拡大していく予定です。
2015年度からは、日本およびアジア諸国の洪水リスク評価の精度向上を目指した新しい共同研究を、京都大学防災研究所、神戸大学都市安全研究センターと開始しました。今後も、洪水リスク評価の技術を、国内外の保険リスク管理、保険・デリバティブ商品の開発、BCP策定などのリスクコンサルティングサービスに積極的に活用し、具体的かつ実践的なソリューションを提案します。

  1. 洪水リスク評価システム:想定し得るあらゆる降雨シナリオに基づき、今後発生する洪水被害を確率的に評価するシステム。
  2. 洪水シナリオリスク評価手法:過去に観測された豪雨、または確率降雨(例:100年に1回の確率で発生する強さの降雨)を想定した豪雨など、ある特定の降雨シナリオに対する洪水被害を評価する手法。